「今じゃない」を繰り返すうちに、何年も経っていた

朝の光が差し込む部屋で、充電ケーブルをスマホにつなぐ女性の手元
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書けないことから始める夜

最初にね、ひとつだけ置かせて。

ほんとは書きたくないことがあるんだ。
触れたくないって、
心が小さく首を振るところ。

「今じゃない」って言いながら、
あなたは、
ずっと同じ場所にいるみたいで怖い。

その怖さを、
誰にも見られたくない。
自分にも見られたくない。

たとえば、スマホのメモにだけ残ってる。
“いつかは、
ちゃんと向き合う”って言葉。

でも、今日も消さずに、閉じたまま。

外は晴れてるのに、心は曇り。
責めるほどの雨じゃない。
けれど、乾きもしない。

そんな曇りの日が、
気づけば何日も続いてた。
そしてね、ふと振り返ると、
何年も経っていた。
それがいちばん、
胸にくるんだよね。

「今じゃない」を繰り返して何年も経った

気づいたらね、
季節がいくつも通り過ぎてる。

仕事は回ってる。
生活も壊れてない。
友だちとも笑えてる。

なのに、心の奥だけが、
同じところで足踏みしてる。

具体的な悩みをひとつだけ言うね。

あなたは、
好きな人に「会いたい」って言えない。

言えないまま、
いつも「また今度ね」
って自分に言ってしまう。

相手が忙しいかもしれない。
重いって思われたくない。

断られたら立ち直れない。
そんな予感が、先に胸を締める。

だからあなたは、
先回りして優しくなる。
相手の予定を気にして、
空気を読んで、
笑ってしまう。

そのやさしさは、
ちゃんと本物だよ。
でもね、そのやさしさが、
あなた自身の本音を
置き去りにすることもある。

ここで大事なのは、
怠けてるわけじゃないってこと。

むしろ、
あなたは真面目すぎるくらい真面目。
一回の言葉で、
関係が変わる気がしてしまう。


だから、慎重になる。
慎重になりすぎて、止まる。

心の天気で言うなら、
曇りが続いてる日。
雨じゃないから、
泣けるほどでもない。

でも、日差しが弱いから、
元気も湧きにくい。

「大丈夫」って言えるけど、
ほんとは少し寒い。
その寒さをごまかすために、
予定表を埋めたり、
動画を流したり、
検索をしたりする。

そして夜になると、
静かに戻ってくる。

“結局わたし、
何も言えてない”って。
時間が一番冷たい形で、
そこに立ってる。

だから「今じゃない」は、
逃げじゃない。
あなたが壊れないように、
心が作った小さな避難所なんだ。

ただね、避難所にいる時間が長くなると、
「ここが自分の居場所」
みたいに感じてしまう。
それが、じわじわ苦しくなるんだよ。

占いで決めてもらうのが怖い夜

朝焼けの山々を前に、木の橋の上で立ち止まり遠くを見つめる女性の後ろ姿

ここでね、占いの話をするよ。
占いって、
未来を当てる道具だと思われがちだけど、
わたしは少し違う見方をしてる。

占いはね、
決めてくれる人じゃない。

「右です」
「左です」って、
あなたを引っぱる係じゃない。
もっと静かなもの。
人生のGPSみたいなものなんだ。

今、自分がどこに立ってるか。
どの方向を怖がってるか。
どこが曇っていて、
どこに風が吹いてるか。
それを、そっと映す鏡に近い。

あなたが占いに惹かれるのは、
弱いからじゃない。
むしろ、
ひとりで抱えすぎてるから。

誰にも言えない本音が、
胸の奥で渋滞してるから。

「わたしはいま、どこにいるの?」
って確かめたくなる。

だってさ、好きな人に
「会いたい」って言えないままの時間って、
ただ止まってるだけじゃないんだよ。

心の中では、
いろんなことが動いてる。

期待も、
怖さも、
自己嫌悪も、
少しの希望も。
それがぐるぐる回って、
疲れてしまう。

占いは、そのぐるぐるを
「だめ」と裁かない。

「あなたはこういう人」
って決めつけもしない。
ただ、こう言ってくれる感じなんだ。

今日は曇りだね。
でも、雨雲の種類が分かると、
傘の持ち方が変わるよね。
風向きが分かると、
立つ場所を少しずらせるよね。

そういう、
今の立ち位置の確認。

それだけでも、
心は少し客観的になれる。
客観的になるとね、
不思議と呼吸が戻ってくる。

占いを「決断の代行」にしてしまうと、
当たった外れたで、
心がまた忙しくなる。

でも「現在地の確認」にすると、
当たり外れよりも、
“わたしはいま何を怖がってる?”が見えてくる。

その見え方は、とても静かで、あなたを傷つけにくい。
乾いた心に、いきなり水を浴びせない。
ぬるい湯気みたいに、少しずつ戻してくれる。

決めなくていい夜に「今の場所だけ確かめる」

最後にね、提案というより、
置いておく言葉がある。

決めなくていい。
変えなくていい。
今日は、曇りのままでいい。

ただ、今の場所だけを確かめよう。
「わたしは本当は、
会いたいって言いたいんだな」

それを、心の中で一回だけ言ってみる。
声にしなくてもいい。
メモに一行でもいい。
消してもいい。

“言えない”を、悪者にしないで。

言えない日があるのは、
あなたが弱いからじゃなくて、
あなたが大切にしたいものがあるからだよ。

占いでも、日記でも、
深呼吸でもいい。
今の空の色を、
そっと確かめる。

晴れにしようとしなくていい。
曇りだと気づけたら、
それだけで前より少し正直だからね。

そして、もし明日、
ほんの少しだけ雲が薄くなったら。
そのときに、短い言葉を考えればいい。
「今日、少しだけ会える?」みたいに。
大きな宣言じゃなくて、
小さなひとこと。

今夜はね、決める夜じゃない。
今の立ち位置を、静かに見つめる夜。
それで十分だよ。

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